「鹿男あをによし」万城目学著を読んで
読みました。ドラマの原作本を。
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~~ ネタバレです ~~
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どうしてもドラマを見た後なので、脳内補完してしまう部分があって、純粋に本の世界だけを味わっていくという感じにはならなくて・・・、ちょっともったいなかったかな。
はじめに本と出会っていた方が良かったのかも。
ドラマとくらべるとかなりシンプルなお話に感じますが、おもしろかったです。
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特に、リチャードがねずみの運び番だと判明する件は、ドラマとは違うので、「一粒で2度おいしい」という感じで本を楽しませてもらいました。
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本を読んで、一番ビックリしたのは、やはり「藤原くん」が男性教師だったこと。
それにあまり出番がないこと・・・。
かりんとう兄弟には大笑いしましたが・・・。
本は、小川先生、藤原くん、重さん3人の、のほほん先生トリオと、鹿、キツネ、ねずみの個性的古代トリオ、リチャード、堀田ちゃん、マドンナの翻弄されるトリオのお話だったみたいかも。
無理矢理か・・・。(笑)でも、それぞれがいい味を出してました。
最後、先輩教師の重さんが小川先生に言う、「先生は強い人だ」って言葉が、読んでいてとてもうれしく印象に残りました。
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この作品の真髄は、鹿、キツネ、ねずみの古代ロマン話。
発想がもう凄すぎる。
その上、軽妙な展開。あろうことか、「マイ鹿」の伏線に、ビックリ。(笑)
そして「鹿せんべいそんなにうまいか」「パンツ3枚千円」など、思わず噴出してしまう底抜けのおもしろさ。
私はてっきりドラマ化で追加された部分があるのだろうと思ってましたが、ここらへんは本のままだったんですね。
こんなおもしろい本が出版されていたんだな~とあらためて驚きました。
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また、「藤原くん」を女性にしたドラマ版は、度胸の塊だな~とつくづく思いました。
変な言い方ですが・・・。
ドラマ11話分にお話をふくらませるには、キャラの改変は必要でしょう。
でもここまで原作の良さをそのままに、まったくあらたな楽しさをプラスさせるって相当、難しいことだろうと思います。
脚本家の相沢友子さんは相当構成力のある方なんですね。
おかげで、女性「藤原くん」パートでかなり笑わせてもらいました。
その上、奈良の博物館、古墳が存分に映りましたし、大阪パート、京都パートも生きてきました。
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ただ、ドラマ版を見ていた時、ちょっと小川先生に対する思いで、藤原くんと堀田ちゃんがかぶる部分があって。(最終話部分です。)
繊細な描写でかなり気をつかって、それぞれを位置づけているのはよくわかりましたが、でもやはりかぶるなあ~という思いは残りました。
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それと、あとひとつ。
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ドラマではあまり語られることがなくて、疑問というか、小さな引っ掛かりが残ったことがありました。
うれしいことに、それが本でクリアになりました。
それは、鹿、キツネ、ねずみの描写や関係性について。そして昔からの儀式の仕組みについてとかです。
ドラマではまったく語られなかったことでしたが、本にはそこらへんが書かれてありました。
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「鹿男」マニア(笑)にとっては、古代からの儀式に関連するこういう情報があるのはうれしいのではないかと。。。
というか、私は涙が出るほどうれしかったです。
スー、と心の中の引っかかりが消え去って、とても爽快感がありました。
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少しの部分なので、ドラマでも鹿やねずみに語らせることはできたのに、それがなかったことが腑に落ちないところでしょうか。
これが唯一、小川先生と女性藤原くんの心の動きに焦点をあてたがために起こった弊害だったみたいですね。。。
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しかし、この「鹿男あをによし」の世界をよく生み出して、そして映像化してくれました。
作家さんとドラマ関係者の方、両方に感謝です。
本とドラマとで、この3ヶ月、十二分に楽しませてもらいました。
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テレビ番組を見ていると、鹿男のエンディング曲が使われていたりすると、すぐに奈良公園を走る鹿の映像が頭に浮かびます。
修学旅行の一行がいなくなったら、奈良へ行くぞ、と心に誓う日々です。
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